「これが芸術だというようなものは、ほんとうはありはしない。」という、衝撃的な一文から始まる本書は、ヨーロッパ美術が中心ではあるけれども、原始美術やイスラム圏、日本を含むアジアの美術にも目配りを怠らない美術史概説書になっています。もちろん、印象主義と日本の浮世絵との関係など異文化交流にも触れています。また、著者自身が、ある現代美術家の正当な価値に気づかなかった経験にも言及しているところなど、美術史家及び批評家としての誠実さを感じます。